ラブソングは舞台の上で



ボフッ——……

体が跳ねて、少しだけ目が覚めた。

この感触、におい、覚えがある。

間違いなく、我が家のベッドだ。

掛け布団を掴み、安心して眠りの世界へ入ろうとしたとき。

「眠るな。起きろ」

不機嫌な男の声がした。

私はここでやっと異常を感じて目を開けた。

直射する明かりが眩しい。

体をくねらせ、明かりから目を背けながらゆっくり視力を取り戻す。

次第に明るさに目が慣れてきて、不機嫌な男の正体が明らかになってきた。

「ん……? はる……み?」

晴海はベッドの脇で腕を組み、私を見下ろすというよりは睨み付けている。

意識がハッキリしてくると、だんだん記憶もよみがえる。

私、またやっちゃったのか……。

劇団の忘年会で、おばちゃんたちに絡まれて、ともちゃんに助けてもらって、晴海に避けられてムカついて、卓弥さんに飲まされて。

ともちゃんと卓弥さんを入れて三人で話していたのは何となく覚えているけど、いつ眠ってしまったのかまでは思い出せない。

どれくらい眠ってたんだろう。

外はもう暗いみたいだ。

「明日香、酒飲んだろ。禁止だって言ったのに」

説教を垂れる気か。

対抗意識の燃えた私は、だるい体を無理矢理起こした。

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