ラブソングは舞台の上で

掛け布団から顔を出すと、彼はベッドに背を向け、脱いだ服を身に着けていた。

しないの?

……なんて、恥ずかしくて聞けなかった。

するつもりがないから着ているのだ。

聞く意味がない。

私は劣情に焦がれた自分の体を抱き締め、奥歯を噛み締める。

「ごめん。俺、相当酔ってる」

「うん」

酒のせいにされてしまった。

目の奥がツンと痛み、涙腺が緩む。

「頭冷やしながら帰るわ」

嫌だ、帰らないで。

私と一緒にいて。

強くそう思ったけれど、気持ちが口から出ていかない。

晴海は私を視界に入れることなく、ダウンジャケットを羽織りマフラーを巻いた。

苦しい。

晴海は平気なのだろうか。

それとも、さっきのキスがお気に召さなかったのだろうか。

私ではダメだったのだろうか。

晴海の気持ちが全然わからない。

わからなすぎて、聞くのも怖い。

やっぱり私は臆病者だ。

「ちゃんと戸締まりしろよ」

晴海はそう言い残して、さっさとこの部屋から出ていってしまった。

扉が閉まる音が部屋と胸に響き、だんだん遠くなる足音が切ない余韻を演出している。

自分の唇に触れると、涙が一気に溢れてきた。


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