ラブソングは舞台の上で

新年会は、元日でも開いている居酒屋にて。

恵里佳ちゃんと堤くんもソフトドリンクで参加している。

「晴海、酒が進んでねーぞ」

タカさんが面白がって晴海に飲ませようとしている。

「俺今日はマジで無理……」

「お前、そんなんで東京なんて行って大丈夫なのかよ。酒強くないと出世できないんだろ?」

晴海にグラスをグイグイ押し付けるタカさん。

次の瞬間、彼の手がパチンと叩かれる。

恵里佳ちゃんだ。

「ちょっとタカさん! 晴海ちゃん具合悪いんだからもう近付かないで!」

晴海の横を陣取り、タカさんの攻撃から彼を守ろうとしている。

恵里佳ちゃんはとても偉そうだけど、何でもすごく頑張る子だ。

その頑張りで得られた成果こそが、自信の根拠なのだと思う。

いつも頑張って晴海にアピールしているけど、晴海は春にこの町を出て東京へ行く。

恋が成就しても、離れ離れになったら辛いのではないか。

私がそんな感じのことを言うと、ともちゃんがふと思い出したように教えてくれた。

「恵里佳、東京の大学受けるって言ってた気がする」

さすがというべきか、何というべきか。

都会に出たいとかより、晴海を追っていくという印象を受けるが考えすぎだろうか。

彼について行くという発想すらなかった私とは、本気度が違うのかもしれない。

「そういえば明日香ちゃん、一昨日はちゃんと晴海ちゃんと仲直りできた?」

「ぶふぉっ……! ゴボッゴホッ……」

しまった、その件に関しては完全に油断していた。

< 134 / 315 >

この作品をシェア

pagetop