ラブソングは舞台の上で
新年会は、元日でも開いている居酒屋にて。
恵里佳ちゃんと堤くんもソフトドリンクで参加している。
「晴海、酒が進んでねーぞ」
タカさんが面白がって晴海に飲ませようとしている。
「俺今日はマジで無理……」
「お前、そんなんで東京なんて行って大丈夫なのかよ。酒強くないと出世できないんだろ?」
晴海にグラスをグイグイ押し付けるタカさん。
次の瞬間、彼の手がパチンと叩かれる。
恵里佳ちゃんだ。
「ちょっとタカさん! 晴海ちゃん具合悪いんだからもう近付かないで!」
晴海の横を陣取り、タカさんの攻撃から彼を守ろうとしている。
恵里佳ちゃんはとても偉そうだけど、何でもすごく頑張る子だ。
その頑張りで得られた成果こそが、自信の根拠なのだと思う。
いつも頑張って晴海にアピールしているけど、晴海は春にこの町を出て東京へ行く。
恋が成就しても、離れ離れになったら辛いのではないか。
私がそんな感じのことを言うと、ともちゃんがふと思い出したように教えてくれた。
「恵里佳、東京の大学受けるって言ってた気がする」
さすがというべきか、何というべきか。
都会に出たいとかより、晴海を追っていくという印象を受けるが考えすぎだろうか。
彼について行くという発想すらなかった私とは、本気度が違うのかもしれない。
「そういえば明日香ちゃん、一昨日はちゃんと晴海ちゃんと仲直りできた?」
「ぶふぉっ……! ゴボッゴホッ……」
しまった、その件に関しては完全に油断していた。