ラブソングは舞台の上で

「ちょっ……大丈夫?」

「仲直りって……別に私たちケンカしてたわけじゃないし」

「うそだー。おととい、明日香ちゃん怒ってたし、晴海ちゃんも怒りながら連れて帰ってたもん」

私、怒ってたの?

酔っ払ってともちゃんと卓弥さんに愚痴ってたんだ、きっと。

我ながら情けない。

一方で晴海は、私が彼の忠告を無視して酒をガンガン飲み、潰れたことに怒っていた。

各々が怒っていただけ。

だからやっぱりケンカというわけではない。

「大丈夫だよ。おとといは酔ってただけだから」

お互いが怒ってたことなんて、濃厚にキスしてヤリかけて、全部ぶっ飛んだ。

思い出すと胸に来る。

あの時、私は晴海に身を委ねるつもりで、彼から与えられる甘い刺激を心待ちにしていた。

キスだけで目眩がするほどの快感があったけれど、期待したものが得られなかった寂しさは、思った以上に心を消耗している。

これがいわゆる、欲求不満?

「なーなー。酒も飲まずに何の話?」

頭上から声がかけられる。

見上げると、ビール瓶を両手に抱えたタカさんだった。

「私は飲んでるも—ん」

そう言ってともちゃんはタカさんに自分のグラスを向けた。

タカさんは慣れた手つきでビールを注ぐ。

「ほんと智子はザルだよなー。一回くらい酔っ払ったところ見せてみろよ」

ともちゃんってそんなにお酒強いんだ。

自分が潰れてばかりだったから知らなかった。

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