ラブソングは舞台の上で

「ていうかタカさん、なんでこっち来たの?」

「だってよー、恵里佳が晴海をガードしてっから、おもしろくねーんだもん」

「恵里佳、今日はいつも以上にべったりだね」

彼女の様子をうかがってみると、もぐもぐ何かを食べている晴海に、献身的にウーロン茶を差し出している。

「明日香ちゃんに見せつけたいんだろ。だから代わりに俺が明日香ちゃんをイジりに来た」

「えっ? 私ですか?」

「そうそう。晴海が潰れてる隙を突かないと、明日香ちゃんとはまともに話もさせてもらえないからな」

タカさんは私の目の前の席に座り、私に準備された使わないビアグラスに自分のビールを注ぎ、飲む。

「そんな。私、自分から話しかけるのが苦手なだけで、タカさんのこと、避けてたわけじゃないですよ」

そう返すと、タカさんは軽く笑ってグラスを空にした。

私は何となく催促されているような気がして、空いたグラスにビールを注ぐ。

「そんなのわかってるって。今までは晴海が俺を放さなかったから、俺から近づくタイミングも奪われてたんだよ」

「晴海がわざとやってるみたいに言いますね」

「だってわざとだもんよ」

「まさか」

私は鼻で笑いを漏らすが、ともちゃんもタカさんに賛同した。

「気付いてないの、たぶん明日香ちゃんだけだよ?」

「いやいや、ないって」

タカさんは困惑している私を楽しむかのように追撃する。

「で、そこまで晴海に愛されてる明日香ちゃんは、一体何をして晴海をあそこまでヘコませたのかな?」

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