ラブソングは舞台の上で

セリフ、歌、ダンスも覚えなければならないのに、指導された細かい動作まで記憶できるだろうか。

自分の台本にできる限り書き込んでメモを取るようにしているが、全ては書ききれないし、自分で書いたのに読めない字があったりする。

これ以上みんなの足を引っ張りたくない。

自信はどんどんなくなっていく。

「じゃあ、今日はここまで」

午後10時。

本日の稽古が終了した。

「ありがとうございました!」

長かった。

先月の稽古で多少体力がついてきたつもりだったが、まだまだ私はヘタレだ。

これから着替えて、帰って、軽く何か食べて、お風呂に入って……ああ面倒。

晴海との個人練習はなくなったけれど、体はもつだろうか。

いつものようにみんなで床掃除をして、各々着替える。

更衣室はいつも私が最後になる。

ともちゃんは大体旦那さんが迎えにくるから着替えずに帰ることが多いし、恵里佳ちゃんは私と二人きりになるのがよっぽど嫌なのか、着替えるのが速い。

帰り支度を整えて更衣室を出ると、稽古場には再び不穏な空気が漂っていた。

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