ラブソングは舞台の上で
晴海と恵里佳ちゃんが険しい顔で向き合っており、その傍らにタカさんと堤くんが立っている。
私から見ると恵里佳ちゃんだけが後ろ姿だ。
男三人が可憐な少女を襲っているように見えて、一瞬声を上げそうになった。
「もう明日香に決まったんだ。これ以上わがままはやめろよ。本当に役まで外されるぞ」
晴海が諭すように告げるが、恵里佳ちゃんは怯まない。
「晴海ちゃんが主役をやる時は、ヒロインはあたしがやるって、ずっと決めてたんだもん」
「それを決めるのは恵里佳じゃないだろ」
恵里佳ちゃんはまだ諦めていない。
だから、今日ここで決着をつけようとしているようだ。
「だから決定権のある人に頼んでたんじゃない。みんなあたしの気持ちをわかってて、なんで夢を叶えてくれないの? これが唯一のチャンスなんだよ?」
恵里佳ちゃんの悲痛な叫びが私の胸にザクザク刺さる。
晴海のヒロインを奪うために、人一倍の努力を重ねてきた。
受験だってあるのに、きっとたくさん無理をしてきただろう。
彼女のわがままは、熱意と意地の裏返しなのだ。
みんなもそれをわかっているから、辛い。
「どうしてって、わかるだろ。単純に、求められているのが恵里佳じゃなかっただけだ」
「わからない。全然わかんないよ。一体あたしには何が足りないっていうの?」