ラブソングは舞台の上で

「俺らも帰ろうぜ。俺、明日現場早いんだよ〜」

タカさんがあくびをしながら向こうに放っていた荷物を持ち上げる。

換気扇を消したり明かりを消したりして外に出ると、さすがにもう二人の姿はない。

「じゃーなー」

タカさんは店の前に停めていた単車で去っていった。

「俺らも帰るか」

「うん」

晴海は私をバス停まで送ってくれた。

バスが来るまで話をしていたが、お互いに公開告白のことには触れなかった。

「ねぇ、さっき見ちゃったんだけど」

「何を?」

「堤くんが恵里佳ちゃんにチューしてた」

「マジ!?」

晴海が大声を出したから、周りの人の視線が数秒こちらに向いた。

「声大きい」

「ごめん。でもさすがに驚いた。堤のやつ、しれっと頑張ってんだな」

「うん。急には無理かもしれないけど、上手くいってほしいって思ってる」

「俺も」

私たちはどうなるんだろうね。

つい声に出して言いそうになったけれど、寸でのところで息を漏らすだけに留めることができた。

私の疑問は一瞬白く濁った後、風に乗ってどこかへ行ってしまった。



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