ラブソングは舞台の上で

この時は、少しだけ動きを復習して、すぐに自宅へ帰るつもりだった。

しかし、公園での自主練は、初回にして予想外の展開を迎える。

練習開始から約15分。

男女の集団の話し声が近づいてきて、私はとっさにタコを模した滑り台やトンネルが合わさった遊具の裏に身を隠した。

だって、イイ年した女が一人で

「キュッキュ」

なんて呟きながらお尻を振って踊っているところを見られるのは、さすがに恥ずかしすぎる。

私は少し上がった息を落ち着けながら、冷たい遊具に背中を預け、彼らが通り過ぎるのを待つ。

しかし、この行動が自分の首を絞めることになった。

あろうことか、彼らはこの公園に入ってきてしまったのだ。

私は彼らがここに辿り着く前に、何食わぬ顔をしてそそくさとこの公園を出るべきだった。

何を話しているのかはよく聞こえないが、独特の下品な笑い方や語尾のイントネーションから、いわゆるヤンキーと呼ばれる人種であろうことは予想がついた。

ヤンキーご一行様は総勢6名くらいで、音から判断すると、ブランコのあたりにたむろしているようだ。

タバコの匂いと女の子の香水の香りが風に乗って私のところに漂ってくる。

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