ラブソングは舞台の上で
この小さな公園には、このタコの遊具の他に、ブランコと鉄棒、そしてベンチがいくつかあり、外周はツツジなどの灌木で囲まれている。
出入り口は、彼らのいるブランコのすぐ近くにしかない。
よって彼らに気付かれずに出入り口から出るのはほぼ不可能だ。
路地はたったの2メートル先だが、いくら低くてもこれらの木を飛び越えることはできない。
パキパキ踏みつけて道に出るような真似もできない。
晴海に助けを求める?
いや、この程度のことで夜中に呼び出すなんて非常識すぎる。
じゃあ堂々と出て行ってみる?
いやいや、無理だ。
怖い怖い怖い。
考えている間に、温まりかけていた体はどんどん冷えていく。
とりあえず携帯電話がマナーモードであることを確認し、音を立てないよう細心の注意を払って脱出方法を考える。
しかし考えても考えても、方法は見つからなかった。
「ぎゃははははは!」
「おめーガキかよ!」
彼らがやって来て約30分。
いまだ盛り上がっている彼らは、公園を駆け回り始めた。
ぐぁんぐぁんぐぁん……
背中に振動を感じ、血の気が引く。
こ、こっちに来た!
ズザザザー……
「ぎゃはははは!」
とうとうタコの滑り台まで使い始めて、ビクビクしながら息をひそめる。
いくら裏でも、こちら側を覗かれたら見つかってしまう。
神様……!