ラブソングは舞台の上で
「ちょっと待ってて。今出るから」
「無理しなくていいよ」
「ううん。平気」
電話を切って起き上がると目眩がした。
頭が重くて上手にバランスが取れない。
どうやらまだまだ治っていないらしい。
むしろ朝より酷くなっている気さえする。
冷たい空気を深呼吸をするとのぼせた頭が少し冷めて、彼に風邪がうつらないようマスクを装着する配慮ができた。
チャイムが鳴ってから約3分、やっと扉を開くことができた。
冷たい空気と一緒に翔平の懐かしいにおいが流れ込んでくる。
「お待たせ……わざわざありがとう」
私の顔を見るなり、翔平は心配そうに顔を歪ませた。
「すげー具合悪そうじゃん」
人にこんな顔をさせるのは申し訳なくて苦手だ。
付き合っている頃、風邪を引いた時は翔平が看病してくれていたが、その度にこんな顔をするから心が痛んだ。
「うん……でもただの風邪だよ。コンビニ行かなきゃって思ってたから、助かった」
翔平からコンビニの袋を受け取る。
たくさん買ってきてくれたのか、ずしっと重い。