ラブソングは舞台の上で
「うわ、熱っ!」
「だって熱あるもん」
冷たい手はそのままスルッと私の頬に。
私がその上に自分の手を重ねると、恋人のように指を絡めてくれる。
余計に胸が苦しくなった。
だけど放したくはない。
「水分取ってるか?」
「うん。もらったやつをがぶ飲みした」
枕元に転がしているペットボトルは1リットル入りだが、もう半分以上なくなっている。
さっきの目眩は脱水症状によるものかもしれない。
晴海は翔平がくれたコンビニの袋を見つけ、もう片方の手で手繰り寄せた。
ガサゴソと中身を取り出して、ひとつひとつ私に見える位置に並べていく。
ゼリー飲料、パウチ入りのおかゆ、野菜ジュース、そしてスポーツ飲料がもう一本。
「ゼリーなら寝転んだまま食えそうだな」
「うん、たぶん」
片手を繋いだまま、もう片方の手の指で器用に小さなキャップを外し、私の口元へ。
私はマスクをずらし、一口分吸い込む。
ごくりと飲み込むと、無性に悲しくなった。
「どうした? マズい?」
「ううん。自分一人じゃ食事もできないのが情けなくて」
昨日ヤンキー集団にビビって動かなかった結果風邪を引き、高熱を出したうえ、好きな男にこんな無様な姿を晒して。
何もかもがカッコ悪い。
「バーカ。病人は黙って甘えてりゃいいんだよ」
「でもこんな姿見せたくない」
「見せたくないなら、たくさん甘えてさっさと治せ」
そう言ってゼリーの飲み口を押し付ける。
こんなに優しい顔の晴海は初めて見た。