ラブソングは舞台の上で

「熱い。マジ心配」

「そのうち治るもん」

「代わってやりたい」

「お母さんみたい」

私の言葉に晴海は苦笑いを漏らした。

熱を持った私の生肌から手を離し、いったんお互いが楽な姿勢を探って、程よいところで再び服の上から軽く包み込む。

「残念ながら、お母さんみたいにはいかない」

「え?」

「この体勢、カラダが反応するもん」

その意味を即座に理解した私は、背中に回していた手でパシッと叩く。

「バカ。私無理だし」

「しねーよ、さすがに。してーけど」

顔を見合うと照れくさくなって、もう一度彼の首元に顔を埋める。

また余計に顔が熱くなってしまった。

「治ったら、するのかな、私たち」

「明日香がしたいって言ったらするかもな」

「私次第なの?」

「そりゃそうだろ。無理にはしない。いいからもう眠れって。想像させんな。俺が辛い」

「じゃあ離れる?」

「離れないよ」

晴海が優しい。

私は愛されている。

咳き込んだりすると、「平気?」とか「辛い?」とか「水飲む?」などと囁いて、額や頬にキスをくれた。

晴海は私が眠るまで、ずっと甘やかしてくれた。

どちらかというと、上手く甘えられない私を誘導して、そう仕向けていたようにも思える。

こんなに幸せな風邪は、初めてだった。



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