ラブソングは舞台の上で
一人になった部屋は、広く感じた。
晴海の残り香を求めてベッドへ飛び込む。
晴海はどれくらい私のことを好いてくれているのだろう。
『明日香のことすげー好き』
すげーっていったいどの程度のことを言うのだろう。
『俺もうすぐ卒業してこの町からいなくなるから、彼女とか付き合うとかは考えてない』
『明日香とは、良い舞台を演じるための相棒でありたい』
これらの言葉が、私にブレーキをかける。
勘違いしてはいけないのだと牽制する。
晴海はあえて、私との関係を曖昧にしているのだ。
だから私はまだ、晴海に好きだと一度も言っていない。
『抱きしめて』
『そのつもりで来たんだよ』
酒や病気に付け込まなければ甘えることさえできない。
臆病な私は、いつか晴海に与えられる甘美な温もりを自ら進んで求めることができるようになるだろうか。
こんなに好きになってしまっているのだ。
失って傷つくのは目に見えている。
この人はいずれ、私のもとを去っていくのだから。