ラブソングは舞台の上で
「風邪、治ってよかったね」
先に言葉を発したのは翔平の方だった。
「うん。翔平が食べ物と飲み物をくれたおかげだね。ありがとう」
「あれで足りた? 俺が帰ってから連絡がなかったし、ちょっと心配だったんだ」
翔平の言葉から、私が頼ってくることを期待していたのが伝わってくる。
まさかわざと少し少なめに買ってきたのでは?
などと自意識過剰になってしまう程度には、未練を感じる。
やはり今日こそ彼と決着をつけるべきだ。
そのために彼を呼び出した。
「ねぇ、翔平。年末の話なんだけど」
「ヨリを戻したいって話?」
「うん」
翔平の顔が不安に染まり、心が痛む。
タイミングよくパチッと蛍光灯が本調子を取り戻す。
少しだけ静かになった保管庫の景色がクリアになった。
ためらっている場合ではない。
とっくに答えは出ていたのだから。
「ごめんなさい。お断りします」
きっぱり告げて頭を下げると、彼のため息混じりの笑いが聞こえた。
「そっか。ダメかー」
4年間共に過ごした彼のこの反応が強がりだとわかってしまう私は、ついついフォローを入れてしまう。
「翔平のことが嫌だからじゃないの。私とやり直したいって思ってくれて嬉しかったし、そのために変わろうとしてくれたのも嬉しかった」