ラブソングは舞台の上で

それを別れる前にやっておけば、私たちは今でも恋人同士だったかもしれない。

そしたら合コンなんかに参加することもなかった。

晴海と出会うことも、なかった。

「それでも俺じゃダメな理由は?」

単刀直入に理由を尋ねてきたのは、成長と表現するべきだろう。

これまでずっと、自分にとって苦だと思われる物事ほど遠回りをしていた彼にとっては、勇気が必要だったに違いない。

だから、とても言いにくいけれど、私も勇気を出してちゃんと答える。

「今ね、すごく好きな人がいるの。今までにないくらい、すっごく好きなの」

思い合っていても報われなくて切ないけれど、好きだという気持ちが止められない。

だからたとえこの恋が成就しなかったとしても、彼と共に過ごせる限られた時間を大事にしたい。

だから、ごめんなさい。

「その言い方、俺のこと全然好きじゃなかったみたいで悔しいな」

翔平はそう言って笑った。

彼は一見ぶっきらぼうだけど、私の前ではよく笑うし、優しかった。

気持ちが見えなくて不安な思いもしたけれど、幸せな思い出もたくさんある。

いい恋愛をさせてもらった。

「そんなことない。翔平のこと、大好きだったよ」

けれどもう過去の感情だ。

「うん。それならいいや」

4年間、私と一緒にいてくれてありがとう。

あなたのこれからの幸せを、心から祈っている。

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