ラブソングは舞台の上で

聞いてもあまり詳しく話してくれないが、オヤジと言うからにはある程度年上で、最低と言わしめるほど素行が悪く、しかしそれでも関係を続けたくなるくらい魅力のある人だと推測している。

推測はしているが、イメージはできない。

「今年こそ、クソオヤジさんと決着はつけないんですか?」

2年くらい前から「完全に切るか、またちゃんとくっつくかしたい」とぼやいているものの、現状は変わっていないという。

「決着、つけたくてもつかないのよ」

「どうしてですか?」

クソオヤジさんが改心しない限り、まもとな関係が築けないのであれば、完全に切ってもよいのでは?

と、私は思っている。

だって詩帆さんはキレイだし、たくさん彼もいるし、オヤジさんよりもっといい人がいるはずなのだから。

詩帆さんはちょっと照れた顔をして答えた。

「ヤッちゃうから」

「……しなきゃいいじゃないですか」

「私だって毎回そう思うのよ。今日はしないぞって、決めてるのよ。でもダメ。気付いたらキスしてんの。脱いでんの。入ってんの」

入ってるって……仮にも乙女の集う食品売り場でしていい話ではない。

私の横で中学生の女の子がキャッキャと話しているが、聞かれてなくて良かった。

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