ラブソングは舞台の上で

「よっぽど好きなんですね」

という私の言葉を、詩帆さんは笑って否定した。

「まさか。あんな節操なし、大っ嫌い」

大っ嫌いなら、どうして毎年チョコなんて作るのか。

「でも、他の男と遊びまくってみたり、会わないように避けてみたってダメなんだから、あのオヤジが運命の相手なのかもね」

自他共に認める男好きの詩帆さん。

様々な場所で男性と知り合っては気に入った人とのデートを楽しむ、底なしのバイタリティの持ち主。

彼をクソだと罵りながら自身も同じことをやってみせるのは、単純に男と遊びたいからなのか、彼以上の男を見つけるためなのか、それとも彼と足並みを揃えたいからなのか。

「理屈を越えてて、私にはわかりませんよ」

「ふふふ。明日香にもそのうち現れるかもよ。気付いたらキスしてて、脱いでて、入ってるような……意識飛んじゃうくらい夢中になってしまう男が」

つまり、クソオヤジさんといると、気付いたらキスしてて、脱いでて、入ってて、意識が飛んじゃうくらい夢中になっちゃうんですね。

詩帆さんは私をからかうときのような笑顔だけれど、腕はしっかりチョコの材料を抱きしめていた。




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