ラブソングは舞台の上で

「お姫様ドレスでロックなんか歌っていいんでしょうか」

「ギャップがあっていいじゃん。高田さんにはちゃーんと許可もらってるよ。シャウトしてもいいし、デスボイス使ってもいい。得意でしょ?」

「まあ、できますけど……」

一国のお姫様がデスボイスで唸り、高音でシャウトしたら、国民はドン引きするのではないだろうか。

「んじゃ、俺の仕事は終わったから、もう帰るね」

卓弥さんは晴海の脇腹に一発入れて、晴海が悶えたのを満足げに見ながらコートを羽織った。

「お前、すぐ帰るよな。たまには自分の曲が歌われるとこ聞いてけよ」

タカさんが言うが、卓弥さんは壁の鏡を見て身なりを整えてゆく。

「俺これからデートだもん」

「はぁ?」

「寒いのに女の子を待たせちゃマズいでしょ。早く温めてあげられるところに行かないと」

温めてあげられるところって……どこですか。

私を含め、みんなの冷たい視線が卓弥さんに注がれる。

そんな視線などものともせず、卓弥さんはマフラーを巻き、髪型を整え、満足げにカバンを抱えた。

「てめーも懲りねーな」

「やだなー。俺、何も悪いことしてないよ。今日の子だって、あっちから誘ってきたんだし」

今日の子って……昨日の子がいたということですか。

男版の詩帆さんみたい。

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