ラブソングは舞台の上で

「お前はいい加減一人に落ち着け。一回くらい結婚する気はねーのかよ。もうすぐ35だろ」

一回くらいって……結婚は一回で十分だと思いますけど。

ああそっか。

タカさんはバツイチだった。

「性欲が落ち着いたらハゲる前に結婚したいとは思ってるけどね」

「……お前は落ち着く前にハゲると思うぞ」

確かに。

後ろで恵里佳ちゃんと堤くん、そしてともちゃんがゲラゲラ笑う。

私と晴海はただひたすら呆れた顔をした。

「じゃーね明日香ちゃん。楽日過ぎたら晴海に見えないとこでデートに誘うね」

卓弥さんは投げキッスをして去っていった。

なんていうか……すごい人だ。



卓弥さんが去った後、みんなでストレッチをしていると、少し遅れて高田さんがやってきた。

手には大きさの違う2つの封筒を持っている。

「チケットとパンフレットが完成した。配るぞ」

その言葉に、みんなが湧いた。

パンフレットはコピー用紙で作成した簡易的なものだが、チケットはちゃんと業者が発券したものだと思われる。

1枚3000円。

私たち演者は、一人最低10枚のノルマを負う。

晴海やタカさんは20枚だという。

ノルマのことは、ちゃんと事前に聞かされていた。

覚悟はしていた。

とうとうこの時が来てしまったか……。

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