ラブソングは舞台の上で
ずっと考えていた。
私は一体誰にこのチケットを売ればいいのだろう。
いや、本当はわかっている。
この町では、私には会社以外にツテがない。
だからもう、会社の人たちに売るしかないのだ。
だけど会社の人たちに、
「ミュージカルやるんで、見に来てください」
と自分から言い出すのは、とても恥ずかしい。
私がキラキラのドレス姿で歌って踊っている姿を見られることにだって、抵抗がある。
私がミュージカルをやっているのを知っている詩帆さんにはチケットを2枚プレゼントするとして、残り8枚、どうしよう……。
「バイト先のメンツは、当日シフト入ってないやつらは全員連れてきます。あとはサークルの仲間と、研究室とー」
「俺はダチと飲み仲間と会社の奴らで何枚さばけるかなー。また昔の仲間に声かけてみるか。子供が小さい奴らに絞って」
アクティブな晴海やタカさんは、様々な場所にツテがあるようだ。
「あたしは学校の男子が見に来てくれるもん。あと女友達が何人か」
「俺も部活の友人達に声かけます」
恵里佳ちゃんと堤くんは学校というツテがある。