ラブソングは舞台の上で
「私は友達と習い事の仲間かな。パート先のお店でお客さんにも宣伝するんだー」
ともちゃんも意外とアグレッシブだ。
なんだか私、友達が少なくて寂しい人間のような気がしてきた。
かといって学生時代の友達に遠方の地元や就職先から来てもらうのは無理だろうし、この町の近くに住んでる友達なんていないし……。
困ったな。
「俺たちの目的は利益を出すことじゃないけれど、利益が出るに越したことはないし、損失を出すわけにはいかない。見てもらってなんぼのミュージカルなんだ。演じるお前達自身がしっかり宣伝してこい」
「はい!」
この舞台で得た利益は、一部は稽古場の維持費に回収し、残りは全てこの町の児童養護施設に寄付される。
利益が出れば出るほど子供たちのためになる。
公演は全部で4回。
配布されたチケットは3月1日、2日、8日のものが2枚ずつ、そして千秋楽である9日のものが4枚の、計10枚。
この薄い短冊が胸に重くのしかかる。
私はヒロインだ。
恥ずかしいなんて言ってらない。
覚悟を決めるしかない。
だけど、願わくば誰かに背中を押してほしい。
私が勇気を蓄えるまでには、もうしばらくかかりそうだ。