ラブソングは舞台の上で
週明け、月曜日。
寒さで朝が辛いけれど、なんとか体を起こして身支度をし、出勤した。
私が勤めているのは、大手企業の子会社に属する、金属加工工場だ。
と言っても、私がやっているのは事務仕事だから、危険の多い製産現場に立ち入ることはほとんどない。
勤務時は制服を着用するため、出勤時の服装は自由。
女子のみが利用する更衣室で制服に着替え、寒いときはその上から男性社員とお揃いの作業服を羽織る。
うちの制服は、工場の割に可愛いのが自慢だ。
控えめなネイビーチェックのベストとスカートに水色のブラウス、そしてポイントにバーガンディーとネイビーのストライプリボン。
作業服もネイビーを基調としたデザインで、左胸のポケットの上には、「牧村」とピンクの刺繍が施されている。
ロッカーの施錠し、鍵は首に下げる社員証ケースの中へ収める。
これで着替えは完了。
更衣室を後にする。
すると、先輩である木村詩帆(きむらしほ)さんが、化粧室からちょうど出てきた。
彼女は私に気がついた瞬間、獲物を見つけたような怪しい笑みを浮かべ、早足でこちらへやって来た。
「おはよう明日香」
そんな表情じゃ、美人が台無しだ。
「詩帆さん、おはようございます」
……嫌な予感がする。
なぜなら彼女こそが、私を合コンに誘った張本人だからである。
「この間の合コンなんだけど……」
き、来た!
私はゴクリと喉を鳴らし、身を固くした。