ラブソングは舞台の上で

バイト先の話を聞きながら稽古場に着くと、チョコの香りが充満していた。

「あっ、晴海ちゃんと明日香ちゃん。チョコあるよー。みんなで食べよう」

ともちゃんが笑顔でカゴに入ったチョコを見せる。

「ちょっとタカさん、そっちはダメって言ったでしょ! 晴海ちゃんのなんだからー!」

「え〜、ケチ。こっちの方がウマそうなんだけど」

「ラッピングだけだし。中身はみんな同じよ」

タカさんは恵里佳ちゃんの準備したチョコに手を伸ばし、怒られている。

シンプルに包装されたアレは、晴海宛か。

恵里佳ちゃん、お菓子作りとか得意そうだし、自分の作ったケーキが劣っていないか気になってしまう。

堤くんは恵里佳ちゃんからもらったと思われる箱の包装を眺めながら、もらえた喜びに浸っているようだった。

「なー、明日香ー」

「なによ」

「俺はいただけるんですかね?」

「……いい子にしてたら、後であげる」

晴海は満足そうに笑い、ともちゃんのチョコの方に走っていった。

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