ラブソングは舞台の上で

「ミュージカル? 牧村さんの知り合いが出るの?」

工場長が尋ねる。

「はい。実は私、ヒロインとして出るはずだったんですけど……」

「ええっ?」

事務所内が一気に湧いた。

みんなが驚く気持ちはわかる。

今までみんなとカラオケにさえ行ったことがない私が、人前で歌って踊ろうとしていたのだから。

ざわざわしてますます落ち着かない。

「でも、色々あってクビになっちゃったんで、私は出ません」

ええ〜、なんだー。

牧村さん出ないの?

所々から落胆の声が聞こえてくる。

惜しむ声が聞こえて、胸が高鳴った。

こんな私でも、興味を持ってくれているの?

もし私がもう少し早く勇気を出していたら、私が出演すると言って宣伝できていたら、彼らは喜んでくれたということだろうか。

「私は出ませんが、結構おもしろいので、都合が付く方は是非。今私の手元には10枚あるので、先着10枚はお代を頂きません。よろしくお願いします。衣装がキレイなので女の子のお子さんは喜ぶと思いますし、恋愛要素もあってデートにもオススメなので、奥様や彼女さんを誘ってみてください」

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