ラブソングは舞台の上で

ノルマ分くらいは私がお金を出せるし、宣伝し続ければ10席くらいは埋められるだろう。

私はもう出ないけれど、舞台は成功してほしい。

興味を持ってくれた人が楽しんでくれたら嬉しい。

ううん、きっと楽しんでくれるはず。

だって「マリッジ・ブレイク」は、台本を読んだだけでもおもしろかったもの。

卓弥さんの楽曲だってレベルが高いし、それを高度に表現できる役者だっている。

見てもらわないと、もったいない。

……出たかったな。

あと何回後悔するんだろう。

この日の夕方、詩帆さんに

「飲み行くよ! 車置いてくるから、時間潰してて」

と言いつけられた私は、久しぶりにゆっくり買い物にやって来た。

いつも晴海と待ち合わせしていたショッピングモールは、バレンタインが終わり、落ち着きを取り戻している。

もうすぐ約束の時間……7時ちょっと過ぎだ。

2階から1階の待ち合わせ場所を見下ろしてみる。

もし晴海が来たら……などと想像してみるが、7時10分を回っても、15分を回っても、20分を回っても、晴海は現れなかった。

< 236 / 315 >

この作品をシェア

pagetop