ラブソングは舞台の上で
ノルマ分くらいは私がお金を出せるし、宣伝し続ければ10席くらいは埋められるだろう。
私はもう出ないけれど、舞台は成功してほしい。
興味を持ってくれた人が楽しんでくれたら嬉しい。
ううん、きっと楽しんでくれるはず。
だって「マリッジ・ブレイク」は、台本を読んだだけでもおもしろかったもの。
卓弥さんの楽曲だってレベルが高いし、それを高度に表現できる役者だっている。
見てもらわないと、もったいない。
……出たかったな。
あと何回後悔するんだろう。
この日の夕方、詩帆さんに
「飲み行くよ! 車置いてくるから、時間潰してて」
と言いつけられた私は、久しぶりにゆっくり買い物にやって来た。
いつも晴海と待ち合わせしていたショッピングモールは、バレンタインが終わり、落ち着きを取り戻している。
もうすぐ約束の時間……7時ちょっと過ぎだ。
2階から1階の待ち合わせ場所を見下ろしてみる。
もし晴海が来たら……などと想像してみるが、7時10分を回っても、15分を回っても、20分を回っても、晴海は現れなかった。