ラブソングは舞台の上で
彼女は当たり前のようにしみじみと語るが、離れているのはごく一部の人だけだと思う。
「私は本当に好きな人としかしないし、付き合いませんよ」
「そんなのもったいない」
もしかして、私の方がマイノリティなの?
一般的には、好きな人以外ともしてみるものなのだろうか。
もったいないと言われてしまうほど、自分が損をしていると感じたことはない。
詩帆さん以外の人とはこんな話をしないから、判断できないけれど。
それに、今は。
「好きな人とですら、縁がないですし」
晴海とは千秋楽を待たずに破局を迎えてしまった。
「例の彼とのこと?」
「はい」
私がため息をつくと、詩帆さんは新しく受け取ったグラスをコースターにドンと置いて、少し大きく息を吸った。
「自分が誘って散々巻き込んできたくせに、独断でクビにするなんて頭おかしいのよ、そいつ。ていうか学生だし、ゆとりだし、周りが見えてない責任知らずのガキね。これから就職して上の人間に散々罵倒されて、ちょっとした一言でキレたりしない程度は精神的に大人になってから出直してこいっての。つーか学生の分際で働いてる女の貴重な自由時間を自分のために使わせようだなんて、厚かましいったらありゃしないわ」