ラブソングは舞台の上で

「あっそ。勝手に殺されてよ」

「それでもいいと思った。俺、主役失格だし、勝手にキレて明日香追い出して、ろくでもなかったからさ」

晴海はそう言って、それを見せるように手すりの外側に出してきた。

オレンジっぽい照明のせいで全然違う色に見えるが、あの紙袋を見間違うはずがない。

「ちょっと、それ……!」

ともちゃんに処分をお願いした、バレンタインのチョコレートだった。

なんで晴海が持ってるの?

ともちゃん、捨ててくれなかったの?

「泣くほど美味かった」

「たっ、食べたの?」

「そりゃ食うよ。好きな女が俺のために作ったチョコなんだから」

ということは当然、中の手紙も読んだはずだ。

どうしよう。

手紙には私も晴海が好きだと書いてしまっている。

「俺、前に付き合ってた女に“売れない役者と付き合ってるみたいで恥ずかしい”って言われたことがあって、明日香が言った“恥ずかしい”を完全に誤解してた。明日香の性格は理解してるつもりだったのに、あの時は見失ってた」

だけど私の手紙を読んで、その真意に気付いた……と言いたいわけか。

紙袋が風で揺れる。

「ごめん。本当に酷いこと言った」

私たちの気持ちは繋がっていた。

でも、だからって簡単に許してやるもんか。

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