ラブソングは舞台の上で

「何よ今さら。あんた、私の話なんて聞こうとしなかったくせに、虫が良すぎるんじゃないの?」

「それは本当にごめん。頭に血が上ってた。俺は明日香と主演をやりたい。だって、明日香は俺が見つけたヒロインだし」

「そんなの知らない。最終的に恵里佳ちゃんを選んだのは晴海でしょ」

「断られて殴られたよ」

夕方のともちゃんとの電話を思い出す。

きっとあの時だ。

「ほんと、ヒロインをナメてるよね」

「ごめん」

「私の努力、全部無駄になった」

「無駄になんかしないよ」

ひたむきに私を説得しようとする晴海の姿に、心がムズッとした。

この寒い中、いったいどれだけの時間私を待っていたんだろう。

そろそろ許してあげてもいいのかもしれない。

「もう、あんたに振り回されるのやだよ」

「明日香……」

切ない表情で名前を呼ばれると、頭に普段なら絶対に浮かばないようなフレーズが思い浮かんだ。

だけどそれを口に出すのは、あまりにも恥ずかしい。

だけど、晴海の次の一言で、そのフレーズは簡単に口から漏れていった。

「好きだよ」

「じゃあ、キスして」


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