ラブソングは舞台の上で
強い風が吹いた。
もう春一番が吹く時期に差し掛かったのだろうか。
顔に当たる風が冷たくて、思わず目を閉じて顔を背けた。
目を開いたときには晴海が階段を下りていて、次の瞬間には私も駆け出していた。
互いの距離がなくなると、彼の手が私の後頭部に当てられ、条件反射で目を閉じる。
唇が触れ合っていた数秒間は、風の音も冷たさも感じなかった。
いったん離れると、思い出したように唇が冷える。
「するつもりで、来たんだよ」
もう一度触れて、手を引かれる。
手早く鍵を開け、扉の中へ。
二人きりの世界に飛び込んだような気がして、止まらなくなった。
単身者用アパートの狭い玄関。
靴も脱がずにきつく抱き合い、貪るようにキスをする。
くっついていたい。離れたくない。
いっそのことひとつになってしまえたらいい。
心が熱くて身が溶けてしまいそうだ。
私が段差につまずき転びそうになったタイミングで、やっと靴を脱ぎ、室内へ。
私たちはどちらからともなくベッドへ転がり込んだ。