ラブソングは舞台の上で

「晴海っ……」

「明日香。止めるなら、今しかないぞ」

玄関から部屋に射し込む明かりが、彼を妖艶に見せている。

鼓動が激しくて体中が脈を打つ。

私はこんなにも情炎に身を焦がしているというのに、彼にはまだ「止める」選択肢を提示する余裕があるのが悔しい。

「やだ。早く、して……!」

たまらず訴えると、応えるようにキスがきた。

様々な場所に触れていっては、少し乱暴に着ているものを剥いでゆく。

その仕草から、もう止める余裕などなくなったことがうかがえる。

今、彼が私と同じ気持ちで、同じ衝動に駆られていることに、この上ない幸せを感じた。

「明日香」

吐息混じりの小声に、淫らな気持ちが高まる。

今までに見たことのない鋭く艶かしい眼差しに射抜かれて、体の芯がジンと痺れる。

本能的に“ヤバい”という感覚がした。

いつかの記憶が蘇る。

『明日香は完全にMだと思うよ』

『俺はドMのフリしたドSだから、俺たち相性いいかもね』

その答えが、これから示されることになる。

私はドキドキを静めようと、心臓の辺りを両手で押さえて深呼吸をした。

すると。

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