ラブソングは舞台の上で

「誰が隠していいって言ったの?」

晴海から鋭く制止された。

その瞬間、不可解にも私の胸がキュンと反応した。

こんなタイミングでときめくなんて、おかしい。

「ちがっ……、隠してたわけじゃなくて」

「じゃあ何?」

手首を掴まれ、左右に開かれる。

玄関から差し込む明かりが、狙ったように乳房を照らしている。

見つめられるとすごく恥ずかしい。

だけど、もっと私を見てほしいとも思う。

「ドキドキしすぎて苦しいから、抑えたいの」

力なくそう訴えると、晴海は少し苦しそうに顔を歪めた。

そして私の頬を撫でる。

「そんなの、抑えなくていいんだよ」

晴海は私の服だけを脱がしてゆく。

冷たい空気に晒されている自分の肌が、彼の温もりを求めているのを強く感じる。

「でも、怖い」

こんなに強く速く心臓が動き続けていると、そのうち壊れて止まってしまいそう。

「俺だって同じくらいドキドキしてる」

まだアウターしか脱いでいない晴海が、私の最後の一枚を脱がした。

「あっ、やだ」

私だけが丸裸だ。

晴海は靴以外、何ひとつ脱いでいない。

「早くしてって言ったのは明日香だろ」

「それは……そうだけど」

晴海がニヤリと口角を上げた。

「そうだけど、何? 俺にしてほしいんでしょ?」

「晴海、やだ、言わないで」

わざとだ。

晴海はわざと意地悪をしている。

だけど奇妙なことに、それがちっとも嫌ではない。

すべてが彼を求める気持ちを昂らせるのだ。

「明日香の求めること、全部してあげる。ほら、どうしてほしいの?」

期待と渇望でどうにかなってしまいそうだ。

私は晴海にすべてを暴かれて、奪われて、支配されている。

「晴海も脱いで。寒いから温めて。もっと私に触って。私、晴海になら、きっとどこをどう触られても気持ちいいから……好きにして」

こんな言葉が自分の口から出たことが信じられない。

私はどうしてしまったのだろう。

「あんまり煽んなよ。今日はできるだけ優しくしたい」

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