ラブソングは舞台の上で
煽ったつもりなんかなかった。
晴海にそう仕向けられて、素直に反応しただけだ。
晴海が手早く服を脱ぐ。
何度か見た美しい体は、私の興奮を余計に誘う。
毛布をかぶると見えなくなったが、彼の生肌が冷えた私の体を温める。
大きな手が私の体躯を這い始めると、私の口からは鳴き声にも似た頼りない声が盛れ出はじめる。
肌と肌が摩擦する生々しい感触、水気を含む音、だんだん上がってゆく体温。
晴海は宣言通り、私の求めているものの全てをくれる。
だけど、与えられるためには、恥を捨ててそれを言葉に出さなければならない。
晴海がもたらす感覚は強烈に甘美で、私はその甘さに溺れ、鳴き、震える。
「声、隣に聞こえてもいいの?」
そう咎められ、自分の口を手で塞ぎ首を横に振る。
しかしすぐにその手を掴まれた。
「だから、誰が手で押さえていいなんて言った?」
「だって……!」
「すこし手加減するから、顔見せて」
晴海の肌は、滑らかで柔らかい。
肩の曲線、くっきりとした鎖骨、割れた腹筋、優しくて大きな手。
晴海の全てが私を骨抜きにしている。
「はぁ……もう。どうしてそんなに可愛いの」
「晴海だって……」
言いかけて、恥ずかしくなってやめた。
もっと恥ずかしいことを言わされていたのに、まだ羞恥心が残っていたのかと自分でも驚く。
「なに? 言って」
首を横に振る。
「やだ、無理」
「言えって」
絶妙なタイミングで奏でられる命令口調。
また胸がキュンと疼いた。
私はどうやら、こういうのにとても弱いらしい。
知らなかった。
晴海の言葉に締め付けられると、私はなぜかとても素直になれるのだ。
これはたぶん、認めざるを得ないのだろう。
『明日香は完全にMだと思うよ』
彼の言葉は本当だった。