ラブソングは舞台の上で

「晴海が色っぽすぎて、恥ずかしい」

「そんな“恥ずかしい”なら悪くないね」

「もう、信じられないくらい気持ちいいの」

出会った日の散々な酔い方とか、ついさっきまでヒロインをクビになっていたこととか、どうでもよくなってしまうくらい今この時間が愛しい。

「そんなの、お互い様だろ」

心を奪われるという感覚を、今初めて実感している。

これからの長い人生で何があっても、私はきっと一生この人のことを忘れないと思う。

たとえ離れ離れになって、いつか別の相手と結ばれても、ずっと心の中で思い続ける。

詩帆さんが言っていた

『気付いたらキスしてんの。脱いでんの。入ってんの』

というのも、今なら想像できる。

求められれば無我夢中になって応えてしまうに違いない。

「明日香?」

名前を呼ばれて、ふと我に帰った。

「どうした? キツい?」

心配そうな顔をした晴海が、いたわるように私の額の汗を拭う。

私は首を横に振り、腕をしっかり背中に巻き付け、晴美を強く引き寄せて、必死にキスをした。

「もっと激しい方が、いい。あとは全部、晴海の好きにして」

あなたを深く私に刻み付けてほしい。

この夜の証になるように。



何時間没頭していたのだろう。

気付けば朝日が昇り始めていた。

まだ月曜から火曜になったばかりだとか、仕事に支障が出たらどうするとか、そんな理性はどこにもはたらいていなかった。

とにかくこの人とひとつになりたい。

それが一番大事だった。




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