ラブソングは舞台の上で

出社し、制服に着替え、ロッカーを閉めて鍵を社員証ケースに収める。

寝不足のせいで目が乾燥していたが、大きなあくびで潤った。

「おはよう」

いつもより少し遅れて詩帆さんが出社。

彼女も少し疲れているように見える。

「おはようございます。二日酔いですか?」

昨日はたくさん飲んでいたから、ちゃんと帰れたか心配だったのだ。

自分が家に着いてからメールして確認しようと思ってたのに、晴海が来たからすっかり忘れていた。

「違うの。昨日明日香をバスに乗せた後、クソオヤジに車で迎えにきてもらったんだけどさ……」

あ、卓弥さんが来てくれたんだ。

なら安心。

「オヤジさんを足に使ったんですね」

「そのつもりだったんだけど、結局オヤジの家に連れ帰られて。あんまり寝かせてもらえなくて……ふわあぁぁ」

下の歯の銀歯が数えられるほど大きなあくび。

していたことは、私たちと同じってことですか。

……とは、もちろん言わないけど。

「でも、服は昨日と違いますね。いったん自宅に帰ったんですか?」

「ううん。服とか化粧品とか、オヤジん家にいくつか置いてあるからさ」

なーんだ。

部屋に私物を置いてるなんて、ちゃんとラブラブじゃないですか。

「半同棲みたいですね」

「やめてよ。ただの腐れ縁なんだから」

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