ラブソングは舞台の上で
私と晴海がラブシーンを練習している間、他のみんなは小道具を作っていた。
タカさんはいつも練習で杖として使っている竹の棒に、金色や赤色のフィルムを貼り付けながら野次を飛ばす。
「お前ら、何をそんなに照れてんだよ」
女王の扇子にビジューを貼り付けている堤くんも、ニヤニヤしながら私たちの様子を楽しんでいるようだ。
晴海はムキになって言い返す。
「ここまでピッタリくっつくと、誰だって緊張するでしょ。いつも悪役のタカさんにはわかんなかもしれないっすけど!」
晴海が声を張るから余計に照れ感が強まって、高田さんまで笑う。
「相手が明日香さんだから、興奮してるんでしょ」
堤くんまでイジり始める。
昨夜垣間見た晴海のSっ気は、男性相手には発動しないようだ。
「別に、興奮とかしてねーし!」
ここで衣装の白いヘッドキャップにゴムを入れているともちゃんも参加。
「これから何十回もやるのに、毎回そんなに興奮してたら身が持たないよ?」
「大丈夫だし! こんなの、すぐに慣れるし!」
そんな言い方、全然大丈夫な感じがしない。
そしてとうとうタカさんがトドメを刺しにかかる。
「お前、童貞かよ」
「どっ、童貞じゃねーし!」
稽古場が、さらに湧く。