ラブソングは舞台の上で



2月下旬、やっと私の衣装が完成したという連絡をもらった。

これからは衣装を身に着けての稽古になるという。

私の衣装は、二つ。

純白のウェディングドレスと、ピンクと赤のゴージャスなドレスだ。

衣装の早着替えの必要があるため、ウェディングドレスの上にお姫様ドレスを重ね着するらしいが、一体どれだけの重量になるのだろう。

「重すぎて全然踊れなかったらどうしよう……」

稽古場に向かう途中、晴海にそうぼやくと、彼は笑って言った。

「大丈夫だって。今まで衣装が重くて踊れなかった人はいないよ」

「転んで汚しちゃったりしそう」

「いやいや、衣装なんて着て練習するだけでも汗で汚れるから」

今まで運動着が吸ってきた汗を、これからは洗濯のできない自分の衣装が吸うことになるのか。

衣類用の消臭スプレーが更衣室に3本も置いてあった理由が、今わかった。

「そんなビビってないで、仕上がりを楽しみにしようぜ」

「うん、そうなんだけど」

「俺は早く見たいよ。明日香のお姫様姿」

「あんまり期待しないで」

< 268 / 315 >

この作品をシェア

pagetop