ラブソングは舞台の上で
2月下旬、やっと私の衣装が完成したという連絡をもらった。
これからは衣装を身に着けての稽古になるという。
私の衣装は、二つ。
純白のウェディングドレスと、ピンクと赤のゴージャスなドレスだ。
衣装の早着替えの必要があるため、ウェディングドレスの上にお姫様ドレスを重ね着するらしいが、一体どれだけの重量になるのだろう。
「重すぎて全然踊れなかったらどうしよう……」
稽古場に向かう途中、晴海にそうぼやくと、彼は笑って言った。
「大丈夫だって。今まで衣装が重くて踊れなかった人はいないよ」
「転んで汚しちゃったりしそう」
「いやいや、衣装なんて着て練習するだけでも汗で汚れるから」
今まで運動着が吸ってきた汗を、これからは洗濯のできない自分の衣装が吸うことになるのか。
衣類用の消臭スプレーが更衣室に3本も置いてあった理由が、今わかった。
「そんなビビってないで、仕上がりを楽しみにしようぜ」
「うん、そうなんだけど」
「俺は早く見たいよ。明日香のお姫様姿」
「あんまり期待しないで」