ラブソングは舞台の上で
「うん、私も着てみるね。でもこれ、一人で着られるかな」
ピンクのドレスは背中にかなり太めのファスナーが付けられており、それを隠すように光沢のある生地が重なっている。
純白のドレスの方も背中のファスナーで体にフィットさせる。
自分では締められそうにない。
「私が手伝うよー」
ともちゃんはウェディングドレスの方を手早くトルソーから抜き取る。
「うん、助かる」
私も、ドキドキしながらピンクの方のドレスに触れてみた。
つるんとして、少し冷たい。
ファスナーを下げると、上半身の部分がパサッと腕に掛かる。
この時点では案外軽いのかもしれないと思ったが、これでもかというくらい布を使って華やかに仕立てられたスカートの部分は、いくら中が空洞だといってもさすがにズシッと重量を感じた。
「重い……」
「このドレスと重ね着なんだから、覚悟しなきゃね」
ともちゃんと二人で更衣室に入り、白い方のドレスから装着してみる。
ドレスを着るためにあらかじめ用意していたウウエストニッパーを着け、ドレスの外に出ないようブラの肩紐を外す。
このドレスは、安値で売っている中古のウェディングドレスの余計な装飾を、重ね着のために外して作った物だという。
実際の結婚式で見たことのあるドレスよりはずっとシンプルだが、キラキラ光を反射するスパンコールのレースなどが重ねられていて、とても美しい。
見た目はビスチェタイプのドレスだが、踊っている間に落ちてしまっては大変なので、肩には透明のストラップが付けられている。
ファスナーを上げてもらうと、思ったよりもギュッと締め付けられる。
ともちゃんが「おおー」と声をあげた。
「明日香ちゃんキレイだよ。似合ってる。早く晴海ちゃんに見せに行こう」