ラブソングは舞台の上で
結婚の予定もないのにウェディングドレスなんか着ていいのかと気後れしていたが、ともちゃんが褒めてくれるので満更でもなくなってくる。
「わざわざ今見せなくていいよ。どうせ稽古で見せるんだし、ピンクの方も着よう」
「なるほど、焦らす作戦だね」
「いや、そういうわけでは……」
「晴海ちゃん、きっと惚れ直すね!」
「大袈裟だよ」
でも、惚れ直してくれたら嬉しいな。
衣装の力を借りることになるけれど、来月にはどうなっているかわからないから、今のうちにめいっぱい気持ちを私に引き付けたい。
いよいよ、メインであるピンクのドレスを重ね着する。
裾を踏まないように注意して、着ているドレスを捲り、床に広がるピンクの渦の中心に立つ。
慎重に袖を通して持ち上げると、肩にドレスの重量がかかる。
背中のファスナーを上げてもらうと、白いドレスはピンクの生地に隠れて見えなくなった。
幼い頃に憧れたプリンセスドレス。
まさか実際に身に着ける日がくるとは思ってもみなかった。
鏡を見ると、ドレスが華やかなあまり、自分の短くてパーマのヘタった髪が貧相に写る。
「これでカツラをかぶれば、少しはお姫様に見えるのかな」
「今でも十分見えてるよー。明日香ちゃん、いつも暗い色とか寒色系の服を着てるから気付かなかったけど、ピンクが似合うんだね」