ラブソングは舞台の上で
恵里佳ちゃんは私を冷たい目で見て、キッパリと言った。
「行かないと思うけど」
「え?」
どういうこと?
行かないなら、なんで受けたの?
「あたし、晴海ちゃんと同じ大学が第一志望だから」
「え? そうなの?」
「東京の大学を受けたのは、ただの滑り止めだし、あたし滑らないし」
さすが女王様。
自信満々のセリフ、その衣装によく似合っている。
「そっか……そうなんだ」
少しだけホッとした。
てっきり晴海を追いかけるために東京の大学を受けたんだと思っていたけど、恵里佳様ともあろうお方が、恋を理由に大学を選ぶと考えてたなんて野暮だった。
この子はそんなに、自分のない女じゃない。
「心配しなくても、今さら明日香さんたちの邪魔なんてする気はないよ。引きずるのとかカッコ悪いし」
「逞しいな、恵里佳ちゃんは。そういえば堤くんとはどうなの?」
彼の名前を出した途端、女王の表情が険しくなった。
それが照れの裏返しであることはちゃんとわかっている。
「べっ、別に堤とは何もないし!」
「そうなの?」
前にキスしてるところを見ちゃったけれど、それは黙っておこう。
下手に刺激して意地になったりしたら、堤くんが今以上に苦労することになるかもしれない。
「ていうかそのドレス、あたしが着たかったんだからね、ふん」
私は夢破れた恵里佳ちゃんからのプレッシャーで、また少しドレスが重くなったような気がした。