ラブソングは舞台の上で
翌朝、会社の更衣室にて。
「もー! 明日香! ちょっと聞いてよ!」
詩帆さんは私を見つけるなり、飛びつく勢いで駆け寄ってきた。
見るからに怒り心頭に発している。
このテンションの時は、大体クソオヤジ……もとい、卓弥さん絡みだ。
詩帆さんはいつも、他の男の無礼や粗相はサラッと受け流せるのに、卓弥さんのことになると些細なことでプンプン怒る。
「どうしたんですか?」
「昨日ね、明日香の出るミュージカルにクソオヤジを誘ったの」
「えっ?」
誰か男性と行くだろうと思っていたけれど、よりによって卓弥さんを誘ってしまったようだ。
卓弥さんは私と詩帆さんの関係を知らなかったはずだから、誘われたときはさぞかし驚いたことだろう。
「全部で4日間あるけど、いつなら行ける?って聞いたら、全日程予定があるからダメだって言うの! 絶対ウソだよ!」
いや、ウソじゃないです。
それ本当です。
卓弥さんは全日程の音響を担当します……。