ラブソングは舞台の上で

「あ、ケン坊じゃん。久しぶり」

後ろから晴海がやって来た。

彼がケン坊と呼ぶからには、私たちより年下なのだろう。

「晴海さん、ご無沙汰っす」

晴海にもペコリとお辞儀をする。

見た目のわりに礼儀正しい。

「明日香は初対面だよな。ケン坊はタカさんの息子だよ」

「ええっ? そうなの?」

そういえばタカさん、バツイチ子持ちだって言ってたっけ。

苗字が高畑じゃないということは、きっと元奥さんと暮らしてるんだ。

息子さんは恵里佳ちゃんと同い年だって聞いてたから、すっかり高校生だと思い込んでいたけど……そっか、高校生とは限らないか。

背丈とか、顔つきとか、雰囲気とか、ところどころタカさんに似ている気がする。

「どうもっす。オヤジがお世話になってます」

「いえいえ、とんでもない。私の方がお世話になってばかりで……」

健吾くんが運んでいたのは、女王がお茶に使う白いテーブルだったようだ。

側面の彫刻模様や美しい猫足も、恐らく彼が制作したのだろう。

すごいなぁ。

「おいコラ健吾ぉ! ちょっとこっち来い!」

向こうの方からタカさんの怒声が聞こえた。


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