ラブソングは舞台の上で
「私、どうしたら良いでしょうか」
本当に、まったくもって、自分がどうすべきか検討もつかない。
「とりあえず客席で足を冷やせ。セリフと歌だけはリハーサルを続ける。幸か不幸か、お前は踊りが下手だから、ダンスは少ないし、そう激しくもない。何とかなるだろ」
高田さんが穏やかな声で指示をする。
それがまた辛い。
いつものように激しく怒鳴り散らしてくれたら、その怖さでこの申し訳なさが掻き消せると思ったのに。
「……はい」
「衣装はすぐに直しを頼もう。破れたところを縫うくらいならすぐにできるさ」
「はい」
「ドレスが引っ掛かったのはここだな? 安全なところに配置を変えるぞ」
明日の本番までに、足は治るだろうか。
治らなくても良い。
せめて踊れるくらいに回復してくれれば。
立ち上がって足を着くと、ツーンと鋭い痛みが走った。
そしてズキズキ鈍い痛みが尾を引く。
こんなの、どう考えても明日には間に合わない。
私は必死に患部へ氷を押し付け、治れ治れと強く念じる。
足よりも、心の方がずっと痛かった。