ラブソングは舞台の上で
初日舞台は最悪だった。
足が痛くて私は全く踊れず、それどころか足を引きずりながらの演技は観客の失笑を生んだ。
終始グズグズでグダグダ。
破れた衣装も、急遽縫い合わせたためシルエットが崩れている。
「マリッジ・ブレイク」は愛と勇気と平和がテーマなのに、何ひとつ伝わらなかった。
カーテンコールの時には、観客は3分の1に減っており、劇場の受付の方から
「金返せ!」
と怒鳴る声とスタッフが謝罪する声が、舞台にまで聞こえてくる。
しかし私たち演者が舞台を中断するわけにはいかない。
「この舞台のヒロイン、アンジェラ姫……牧村明日香」
私は無理に笑顔を作り、頭を下げる。
すると、下げた頭にベチャリと何かが投げつけられた。
その何かは頭からドレスに落ちて、そのまま床へ滑っていく。
テレビの罰ゲームなどで見たことのある、生クリームパイだ。
頭を上げると、観客も、同じステージに立つ演者のみんなも、殺気立った表情で私を睨みつけていた。
客席から野次が飛ぶ。
「見てらんねー」
「クソだな」
「二度と来ないわ!」
ひとつ野次が飛ぶごとに、ひとつパイが飛んでくる。
それらはすべて、私に命中した。