ラブソングは舞台の上で
3月1日、土曜日。
朝から晴海と整形外科へ。
「骨折はしていない」という気休めの言葉と、「痛みが引くまでは安静に」という絶望的な言葉、そして炎症を抑える飲み薬と湿布をもらった。
「舞台で踊らなきゃいけないんです。何とかなりませんか」
私の言葉に、医師は苦笑いした。
「テーピングとかでガッチガチに固定するしかないね。足がぴくりとも動かないくらいに。それでも繊細な動きは難しいだろうけど」
それからお手本をということで、医師にテーピングを施してもらった。
今日はこれで踊るしかないが、こんなに分厚くなった足でバレエシューズが履けるのだろうか。
踊りはきっと大丈夫。
お姫様ドレスということもあって、あまり足を使う動きはないし、右足を使う動作は全て見直した。
問題は、足音だ。
様々な足音を練習したのに、どれも使えない。
些細な音だって、舞台では大切な表現の一つなのに。
私はため息を大きくついて、グルグル巻きの右足をムートンブーツにねじ込んだ。
それだけでも、痛む。