ラブソングは舞台の上で

小劇場に着くと、みんなは緊張した面持ちで準備を始めていた。

昨日は私の怪我のせいで手を付けられなかったものもあって、慌ただしい。

「あ、明日香ちゃん。足の調子はどう?」

「うん、まだ痛むかな」

ともちゃんが心配してくれる。

でももう強がって大丈夫とは言わない。

「準備とかあたしたちでやるから、明日香さんはとにかく足冷やして座ってて」

「ありがとう。そうするね」

恵里佳ちゃんの笑顔も自然なはずなのに、心の中では夢の中のようなことを思っているのではないかと勘繰ってしまう。

「どうもお疲れさまです。そういえば明日香さん、テーピングした足で靴入りますか?」

「入らなかったから、さっき右足だけのために大きいの買ってきたの」

爽やかな笑顔を見せてくれた堤くんに、真新しいバレエシューズを見せる。

左足の方は、きっと使わないまま捨てることになるだろう。

「緊張し過ぎじゃね? 明日香ちゃんの売りは歌だから別にいいじゃん」

「でも、できる限りは踊ります」

「根性あるな。無理すんなよ」

タカさんも元気づけてくれるけれど、夢でパイを投げられた感覚がよみがえる。

私、こんなにネガティブな女だったっけ……。

楽屋に入ると、私のドレスはしっかり縫い直されていた。

縫い合わせた部分が安っぽく見えないよう、新しくフリルが増えている。

シルエットも美しいままだ。

おばちゃんたち、これのために夜更かししてくれたんだろうな……。

私はドレスに一礼をして、着替えに取りかかった。

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