ラブソングは舞台の上で
「あたしと変わる?」
悪役っぽい衣装やメイクの迫力も加わって、凄味がいつもの3倍増しだ。
「正直、この衣装は明日香さんの方が似合うと思うのよね。色も黒ベースでクールだし、胸元も開いてるし」
衣装を広げて見せる恵里佳ちゃんに、ともちゃんも賛同する。
「たしかに似合いそう。明日香ちゃん、おっぱい大きいもんね〜」
「ちょっと!」
みんなで使う楽屋なのに、大声でおっぱいだなんて。
可愛い顔をして、何てことを。
堤くんが飲んでいたミネラルウォーターを吹き出し、咳き込む。
「お前ら楽屋でなんつー話をしてんだよ! 見たくなるだろ!」
タカさんがツッコむと、晴海がタカさんと私の間に立って抗議をする。
「見せねーし!」
タカさんは新たなネタを見つけてニヤリと悪そうに笑う。
「ほう、お前は見たのか」
単純な晴海は、すぐに引っ掛かってしまう。
「みっ……見たさ! 当たり前だろ!」
「ちょっと晴海!」
楽屋は笑いに包まれ、緊張感が上手い具合に中和されていった。
だけどこの楽しい雰囲気の中でも、右足の不安だけはなかなか消えてくれなかった。