ラブソングは舞台の上で
本番前だというのに、私の胸は猛烈に震えた。
周囲の歓声も冷やかしも何も聞こえなくなって、不安でいっぱいだった私の心にどんどん晴海への恋心が広がってゆく。
「転んだり動けなくなったりしたら、俺がすぐに助けにいくし、アドリブで何とかする。だから大丈夫。心配すんなって」
愛される幸せで、胸がはち切れそう。
「うん。晴海も世界で一番カッコイイね」
私、この人と出会えてよかった。
ヒロインを引き受けてよかった。
「お前らそういうのは帰ってからにしろよー。行くぞー」
「はーい」
足が痛くたって、練習通りには踊れなくたって、私には歌がある。
晴海だっている。
足が痛くなっても、また転んでしまっても、私ができる全てを駆使しよう。
ここにいる全ての人を魅了し、心を揺さぶるために。
聞いてくれる全ての人へ、最高のラブソングを。
いざ、ステージへ——……