ラブソングは舞台の上で




初日の公演は、驚くほどの拍手喝采で終わった。

やっぱり足は痛くて稽古通りの演技はできなかったけれど、転倒することはなかったし、グダグダになってしまうこともなかった。

舞台は大成功だ。

観客を迎えて見送るまでの3時間があまりにも速かった。

稽古をしていた時間がとても長かったから、一瞬のように感じた。

それこそ舞台の成功は夢だったんじゃないだろうかと、わざと右足で踏み込んでみたりもする。

……痛い。

これは、夢じゃない。

楽屋に戻り座った瞬間、一気に気が抜けた。

みんなが盛り上がっているけれど、会話の内容は全然入ってこない。

「お疲れー! 大成功だったね!」

「お疲れさま。回収したアンケート、高田さんからもらってきたけど見る?」

「見る見る。うわーすごいね。“感動しました!”が一番多い」

「二番目に多いのが、”執事の人カッコイイ“でムカつくんだけど」

「なんだよ恵里佳、ヤキモチか?」

「はぁ? タカさんバッカじゃないの?」

「泣いてるお客さん何人もいたね。見えた?」

「見えた見えた。やっぱ最強だよな。うちの歌姫は」

みんなの視線が私に向いて、ハッとする。

しまった。全然聞いてなかった。

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