ラブソングは舞台の上で

「そうならそうと言ってくれれば良かったのに」

「そうじゃないんだってば!」

「二人が公表するまで、みんなには内緒にしとくから、安心してね」

「いや、だから本当に……」

「私には隠さなくても大丈夫。口は堅いんだ」

ともちゃん、完全に誤解してる。

何とか誤解を解こうと思ったけれど、一気に酒が回った私には、空回りすることしかできなかった。

カッコつけてカクテルなんて飲むんじゃなかった。

素直にソフトドリンクにしておくんだった。

私、どうしてこんなにも酒に弱いのだろう。

初めての場所で緊張したりして疲れていたにしても、弱すぎる。

先週末のように、吐くほど飲まされなかったのがせめてもの救いだ。

この居酒屋での最後の記憶は、鼻の穴だけではなく、両方の耳の穴にもタバコを挿した晴海の、腹筋や腕立て伏せをしている姿だった。

みんなと一緒に回数を数えていたところまでは覚えている。

その後、自分が誰とどんな話をしたのか、そして結局誤解は解けたのか……。

その辺りは全く覚えていない。




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